このページの要点
- 契約の相手方(代金を支払う責任を負う人)を特定する。個人の幹事か会社かで、キャンセル料に消費者契約法9条の枠がかかるかが変わる。
- 人数確定日を一つ置き、確定日までは増減を受け、確定日より後の減少は確定人数を基礎に請求する。仕入れの取消しなどで免れた損害は差し引く考え方を残す。
- 貸切は、型(店全体・区画・時間貸し)、設備、持込、飲み放題の条件を具体的に書き、チラシの文言と確認書面を一致させる。
- 前受金は、内金・手付・違約金・保証金のどれかを書き、返金・充当・店側の都合の場合を分けて定める。
結論:宴会・貸切は「誰が契約の相手か」「人数を何日前に確定するか」「前受金を何として預かるか」を先に決める
宴会、貸切、団体予約の書類で揉める場面は、料理の内容よりも、人数と代金とお金の預かり方に集中します。幹事が人数を減らした、当日に半数しか来なかった、貸切にしたのに他の席の客が入った、飲み放題の時間をめぐって言い分が食い違った、前日に入金した内金が戻ってこない。どれも、予約を受けた時点で「誰と」「何を」「いつまでに」「いくらで」約束したのかが書面で残っていれば、揉める前に答えが出る問題です。
個人のお客様の席予約と比べて、団体予約が難しいのは、契約の相手が一人ではないからです。予約の連絡をくれた幹事、代金を支払う会社、実際に飲食する参加者の三者が別々のことが多く、請求書の宛名、人数の変更の連絡先、当日の追加注文の支払、アレルギーの申告の窓口が、すべて曖昧になりがちです。さらに、相手が会社なのか個人なのかで、キャンセル料の有効性を判断する法律の枠組みが変わります。
このページで押さえる四つの点
- 契約の相手方(代金を支払う責任を負う人)を特定する。幹事個人か、幹事の所属する会社か、参加者から集金する会か。個人(消費者)か事業者かで、使える法律の枠が変わる。
- 人数の確定期限と、最終請求人数の決め方を書面にする。確定期限より後の減少は、料理の仕入れ状況に応じてキャンセル料または確定人数に基づく請求(免れた費用は差し引く)の対象にする旨を、事前に示す。
- 貸切は、時間、範囲、設備、持込、飲み放題の条件、延長の扱いを具体的に書く。「貸切」の一語で済ませない。
- 前受金は、内金・手付・違約金のどれにあたるのかを書く。返金される場合、充当される場合、店側の都合で営業できない場合を分けて定める。
キャンセル料の計算そのものの考え方(平均的な損害の見立て、期日の区切り方)は、キャンセル料の決め方のページで扱っています。このページでは、団体予約に固有の論点、すなわち契約の相手の特定、人数確定、貸切の範囲、前受金、当日の事故に絞って説明します。ネット予約サイトを経由した申込みや事前決済の表示はネット予約・事前決済のページに譲ります。
団体予約が契約になるまでの流れ(確認メールが契約書の役目をする)
口頭だけで予約を受けると、「そんな話は聞いていない」と言われたときに確かめる手段がありません。確認メールかメッセージに、日付・人数・料金・期限を書いて残します。
個人の幹事と会社の宴会では、適用される法律の枠が違う
宴会のキャンセル料をめぐる最初の分かれ道は、予約の相手が「消費者」か「事業者」かです。消費者契約法2条は、消費者を「個人(事業として又は事業のために契約の当事者となる場合におけるものを除く。)」と定義しています。事業者は、法人その他の団体と、事業として又は事業のために契約の当事者となる個人です。同じ幹事でも、友人どうしの会食を取りまとめる個人なら消費者、会社の歓送迎会を会社の費用で予約する担当者なら、会社が契約の相手であり、事業者どうしの取引になります。
消費者との契約であれば、キャンセル料の条項は消費者契約法9条1項1号の対象です。同号は、解除に伴う損害賠償の額の予定や違約金のうち、事業者に生ずべき平均的な損害の額を超える部分を無効とします。9条2項は、消費者から説明を求められたときに、算定根拠の概要を説明するよう努める義務を事業者に課しています。さらに、消費者の利益を一方的に害する条項は10条で無効になり得ます。一方、事業者どうしの取引にはこれらの規定は適用されません。それでも、民法420条は損害賠償の額を契約で予定できると定めるにとどまり、予定額が際限なく有効になるわけではありません。過大に過ぎる定めは、公序良俗(民法90条)に反して無効とされる余地があります。事業者間なら高いキャンセル料でも自由、とは言い切れないことに注意が必要です。
相手方の別に見る、団体予約で押さえる法律
| 相手方 | 例 | キャンセル料の判断の枠 | 書類で押さえる点 |
|---|---|---|---|
| 個人(消費者) | 友人や家族の会、同窓会、個人名義の貸切 | 消費者契約法9条1項1号(平均的な損害)・9条2項(説明の努力義務)・10条 | 期日ごとの区分と、その区分に応じた金額の根拠を整える。説明を求められたときの答えを用意する。 |
| 会社・団体(事業者) | 会社の宴会、取引先の接待、団体の総会後の懇親会 | 民法415条・420条。過大な定めは民法90条の問題 | 請求書の宛名と支払責任者を特定する。消費者契約法の枠を前提にした水準に合わせておくと、後の争いが少ない。 |
| 幹事が立替払いする会 | 参加者から会費を集める会 | 幹事を契約の相手とするか、会の代表者とするか次第 | 代金を支払う責任が幹事個人に残ることを、幹事に分かる形で示す。 |
| 旅行会社・イベント会社経由 | 団体旅行の食事、イベント付随の宴会 | 店と代理店の間は事業者間。代理店と客の間は別の契約 | 店と代理店の契約で、人数確定・キャンセル・支払の期日を揃える。 |
実務で厄介なのは、どちらか判断しにくい場面です。個人の名前で予約が入ったが、実は会社の経費で払う、あるいはその逆に、会社名義で予約して請求先は個人、といった形です。消費者か事業者かは、名義だけでなく、契約の実態から判断されます。判断しにくい場合は、安全側に倒して、消費者契約法の枠で説明できる水準のキャンセル規定にしておくのが無難です。そうしておけば、相手が消費者と認められても、事業者と認められても、規定の有効性を説明できます。
もう一つの落とし穴は、契約の相手の特定です。幹事が「会として予約する」と言って予約し、当日の参加者が少なかったとき、不足分の代金を請求できる相手は誰か。参加者全員が契約の当事者というわけではなく、集金を引き受けた幹事が、通常は店との契約の当事者として代金を支払う立場になります。予約の際に、請求書の宛名、支払責任者の氏名または会社名、連絡先を確認し、確認メールに残します。
確認の問いと理由契約の相手方を決める前の確認
予約の連絡をくれた人が、代金を支払う人か。
幹事が連絡係にすぎず、実際の支払は別の人や会社が行う場合があります。請求書の宛名と支払責任者を、予約の時点で確認して残します。
会社の経費で支払う場合、会社名義で予約を受けられるか。
会社名義なら事業者間の取引として整理できます。名義と実態が食い違うと、後に消費者契約かどうかが争われます。
人数の変更を伝えてくる人は、予約の当事者か。
参加者から直接変更の連絡が来ても、受け付けるのは幹事経由に限る、と決めておくと、人数の食い違いを避けられます。
個人情報(連絡先、アレルギー)は、誰の分を、何のために受けるのか。
個人情報保護法21条は、取得した個人情報の利用目的を本人に通知または公表すること、書面で直接取得する場合は明示することを求めています。参加者名簿を受け取るなら、利用目的を示す必要があります。
人数確定の期限と、最終請求人数の書き方
団体予約のキャンセル料は、全員が来なくなる場合よりも、人数が減る場合に争われることが多くなります。「十名で予約したが七名しか来なかった」という場面です。この三名分の代金を請求できるのか、できるとしてどこまでか。これを決めるのが人数確定の規定です。
考え方の軸は、店側が仕入れと仕込みを止められる最後の時点です。生鮮の食材を前々日に発注するなら、その時点より前の人数の増減は店の損害に直結しにくく、それより後の減少は損害が大きくなります。そこで、人数確定日を一つ置き、確定日までは人数の増減を受け付け、確定日より後の減少は、確定した人数を基礎に請求する、という組み立てが一般的です。確定日の後に増える方向の変更は、店が受けられるかどうかを事前に示します。
条文例人数確定とキャンセルに関する規定の書き方の一例
- お客様は、ご利用日の○日前の○時までに、最終のご利用人数をお知らせください。この時点でお知らせいただいた人数を「確定人数」とします。
- 確定人数は、確定日までに限り、お客様のご連絡により増減することができます。確定日より後に人数が減少した場合でも、確定人数に基づく料理の代金(○○円(税込)×確定人数)をお支払いいただきます。ただし、店が食材の仕入れの取消しや他のご予約への振替により損害を免れたときは、その分を差し引きます。
- 確定日より後の人数の増加は、席と食材の状況によりお受けできない場合があります。お受けした場合の追加分は、当日にお支払いいただきます。
- ご利用日の○日前から前日までに全員のお取消しがあった場合のキャンセル料は、コース料金(税込)の○%とします。連絡のないご不参加の場合は、当日のお取消しの場合の定めを目安として、当店がご予約のために支出し、他に振り替えることができなかった費用の範囲でご請求します。
- キャンセル料の算定根拠について説明を求められた場合、当店は、仕入れ済みの食材、仕込み、他のご予約をお断りした事情などの概要をご説明します。
数字を示す箇所は伏せています。区分と金額の関係は、キャンセル料の決め方のページで考え方を整理しています。第2項後段の控除は、減少分を「全額請求」と書いた場合の消費者契約法上のリスクを和らげる書き方の一例です。
書き方の例(一般的な例) 人数の減少に関する書き方
確定後の人数減
理由「一切」「全額」の硬い書き方は、消費者との取引で、平均的な損害を超える部分が無効とされる余地があります。控除の余地を残すと、条項の説明がしやすくなります。
確定日の置き方
理由「直前」は人によって受け取り方が違います。日付と時刻と連絡手段を明記すると、後の言い分の食い違いを防げます。
連絡の受け手
理由連絡経路が複数あると、人数が二重に変わったり、誰の指示か分からなくなったりします。
確定日の後に人数が減ったとき、減った分の料理が用意済みであれば、その料理を別のお客様に提供する、翌日の仕込みに回す、持ち帰り用に詰める、といった形で損害を減らせる場合があります。民法は、客の側の事情で店が食事を提供できなくなった場合の代金について、債権者(ここではお客様)の責めに帰すべき事由による履行不能では、反対給付(代金)の履行を拒めないとしつつ、債務者が自己の債務を免れたことで得た利益は償還すべきだと定めています(536条2項)。難しい言い方ですが、要するに「来なかった分の代金は請求の基礎になるが、そのために使わずに済んだ費用は差し引く」という考え方です。この考え方に沿って、請求額の見立てを整えておくと、規定の説明がしやすくなります。
人数の増減に伴って、アレルギーや食事制限への対応も変わります。確定日までに、参加者のアレルギー、宗教上の制限、苦手な食材を幹事に取りまとめてもらい、申告のなかった事項は店が責任を負えない範囲があることを示します。ただし、その免責の書き方には限界があります。アレルギーの申告の受け方と、免責が効かない場面は、アレルギー・食中毒・異物混入のページで整理しています。
貸切の範囲:時間・席・設備・飲み放題・持込を具体的に書く
「貸切」は、お客様と店で思い描く内容がずれやすい言葉です。店の全席を借り切る貸切、一部の区画だけの貸切、時間帯を区切った貸切では、他の客が入るかどうか、入口の看板、BGM、音響機器、貸切料の有無が違います。貸切のお客様は「自分たちだけの空間」を想像し、店は「予約席を確保した」くらいのつもりでいる、という食い違いが典型です。
貸切の三つの型と、決めておくこと
店全体の貸切
他のお客様を入れない
- 営業時間外の貸切か、営業時間内の貸切かを区別する
- 最低保証金額(最低利用金額)の有無と、不足分の扱い
- 看板や貼り紙、入口の案内の変更を誰が行うか
区画・個室の貸切
一部の席を独占する
- 区画の範囲と、共用部分(トイレ、通路、喫煙所)の取扱い
- 隣の席の音や動線への配慮の基準
- 区画の人数の上限(定員)と超過時の扱い
時間貸し
時間帯を区切って使う
- 開始と終了の時刻、準備と片付けの時間を含めるか
- 延長の可否と料金の段階
- ラストオーダーと退店の時刻
種類を名乗るだけでなく、予約の確認書面に「どの型か」を書いておくと、後の食い違いが減ります。
貸切の書類で書き落とされやすいのは、設備と備品の扱いです。マイク、プロジェクター、音響設備、ケーキや花の持込、装飾の貼り付け、風船や紙吹雪の使用、ライブ配信や撮影の可否。どれも事前に決めておかないと、当日に断るか受けるかで揉めます。持込と撮影の一般的な書き方は店内利用ルールのページで扱っています。貸切では、貸切のお客様に固有の取決めとして、持込の範囲を予約時に確認し、書面に残します。
飲み放題は、団体予約でもっとも条件の食い違いが出やすい商品です。次の点を、予約時の説明と確認書面で揃えます。
飲み放題の条件で確認する項目
- 時間(開始から終了まで。ラストオーダーの時刻を含むか)。
- 対象の飲み物の範囲(ビールやソフトドリンクだけか、ワインやカクテルも含むか)。
- 全員が対象か、一部の参加者だけ飲み放題を付けられるか。幹事の希望で人数分を揃える条件があるか。
- 延長した場合の料金の段階と、延長中も飲み放題に含まれるか。
- 飲み残し、持ち帰り、取り分けの扱い。
飲み放題や食べ放題の条件の表示は、景品表示法の枠でも問題になります。景品表示法5条は、事業者が自己の供給する商品・役務の取引について、品質などの内容を実際より著しく優良であると示したり、価格その他の取引条件を実際より著しく有利であると誤認される形で示したりする表示を禁止しています。「飲み放題」とうたいながら、実際には対象の飲み物が限られる、時間が短い、追加料金がかかる、といった条件が目立たない形で示されると、問題になり得ます。メニューやチラシの表示の言い方は、メニュー・価格の表示のページで整理しています。貸切では、チラシの文言と確認書面の文言を一致させておくことが、まず必要です。
貸切の変更の扱いも定めておきます。貸切の途中で、お客様の都合で人数が大幅に増えた、席のレイアウトの変更を求められた、という場面です。席の変更が可能な範囲、追加料金の有無、変更の申入れができる期限を決めておきます。逆に、店側の都合で貸切を変更せざるを得ない場合(設備の故障、臨時休業、法令に基づく営業の停止など)の扱いも、前受金の返還とあわせて決めておきます。
前受金・内金:何として預かるかを書く
団体予約では、予約の確定とあわせて、前受金(内金)を受け取ることが多くなります。このお金が何を意味するのかが書かれていないと、キャンセルのときの返金をめぐって言い分が分かれます。お客様は「予約の保証金で、キャンセルしても戻る」と考え、店は「違約金として没収する」と考える、という食い違いです。
前受金の性質と、キャンセル時の扱い
| 名目 | 意味合い | キャンセル時の一般的な扱い | 書面での書き方 |
|---|---|---|---|
| 内金(代金の一部の前払い) | 最終の代金の一部を先に支払う | 代金に充当する。キャンセル料が内金を超えるときは差額を請求し、下回るときは差額を返す | 「代金の一部としてお預かりします」と書き、返金・充当・不足の請求の順序を示す。 |
| 手付 | 契約の解除権を留保する対価 | 民法557条1項は、買主が手付を放棄して契約を解除できる、売主は倍額を提供して解除できると定める(売買の規定)。相手方が契約の履行に着手した後は解除できない(同項ただし書) | 手付の語を使うなら、放棄すれば自由に解除できる趣旨かどうかを書く。食事の提供契約にそのまま当てはまるかは契約の性質次第で、書面で趣旨を明示するのが安全。 |
| 違約金(没収する金額) | 契約に違反したときに支払う金額 | 民法420条3項は、違約金を賠償額の予定と推定する。消費者との契約では消費者契約法9条1項1号の枠を受ける | 「違約金」として没収すると書く場合は、その金額が平均的な損害を超えないよう整える。 |
| 保証金・デポジット | 物品の破損等に備える担保 | 破損がなければ全額を返す | 貸切で備品や設備を使う場合に別立てで受ける。キャンセル料とは混ぜない。 |
民法557条の手付の規定は、売買の規定です。食事と場所の提供を一体にした団体予約が、売買、請負、あるいはそれらの混合した契約のどれと見るかについては、一義的な答えがありません。したがって、前受金を「手付」と呼ぶだけで、いつでも放棄して解除できる、という関係が当然に生じるわけではなく、書面の趣旨の書き方が重要です。民法641条(請負契約で、仕事が完成しない間、注文者がいつでも損害を賠償して契約を解除できる)の考え方も、団体予約のキャンセルを考えるときに参照されることがありますが、同様に、契約の性質の評価を前提とするため、規定の書き方で趣旨を明確にしておくのが実際的です。
書き方の例(一般的な例) 前受金の書き方
名目
理由「返金できません」の一言は、キャンセル料の額の根拠を示さないまま全額を没収する書き方になりかねません。内金、充当、清算の順序を示すと、金額の根拠が説明しやすくなります。
店側の都合
理由店の臨時休業や設備の故障でお客様が利用できないのに、内金が戻らないのは公平を欠きます。店側の事由を明記しておきます。
返金の方法と期限
理由方法と期限が決まっていないと、返金の遅れが新しい争いの原因になります。
前受金の取扱いで、もう一つ気をつけたいのは、金額が大きくなる場合の資金の管理です。貸切や大人数の宴会で、前受金が相当の額になるとき、それを日々の運転資金に使ってしまい、キャンセル時に返金できない、という事態は避けなければなりません。前受金の受領記録、領収書の発行、返金に備えた資金の確保を、運用として決めておきます。食事券やギフトのような、あらかじめ代金を受け取って後でサービスを提供する仕組みの法律上の規制は、食事券・ポイントのページで整理しています。特定の日の食事の予約に結びついた前受金と、金券のように使える券を発行する仕組みとでは、性質が異なります。ただし、券や電子的な残高を発行して後日の利用を認める形にすると話が変わるため、書き方に注意します。
当日の事故・近隣への配慮・出張提供、起きがちなこと
宴会の当日に起きる事故は、団体予約に固有のものが多くあります。酔った参加者が転倒してけがをした、グラスや皿を割った、他の席の客と口論になった、忘れ物が多数出た、近隣から騒音の苦情が来た。これらの責任を誰がどこまで負うのかを、予約時の規定として示しておきます。
宴会の当日に起きがちなことと、押さえる点
- 受付
幹事が遅れ、先に着いた参加者が店に入れない。開始時刻と受付の担当が曖昧。
押さえる点開始時刻、入店可能な時刻、幹事への連絡手段を確認書面に書く。
- 飲み放題
時間をめぐって、終了の合図とラストオーダーの理解が食い違う。
押さえる点ラストオーダーの時刻を、予約時と当日の双方で伝える。確認書面と一致させる。
- 途中の追加
追加料理や追加の人数が出て、誰が支払うかが決まっていない。
押さえる点追加分の支払人を幹事とするか各自とするかを、事前に決める。
- 事故
参加者が転倒し、グラスを割る。けがの手当と費用の話になる。
押さえる点店の施設の管理に落ち度があれば店の責任、参加者の行動が原因なら参加者の責任。免責の定めに頼らず、原因ごとに責任を整理する。
- 精算
最終人数と請求人数が合わない。領収書の宛名で揉める。
押さえる点宛名と但し書きを事前に確認する。人数の根拠は確認メールで示す。
店の施設で発生した事故の責任は、民法の一般の枠組みで整理されます。契約に基づく安全配慮の義務の違反があれば、債務不履行による損害賠償(民法415条)が問題になり、不法行為(民法709条)の責任が問われる場合もあります。店が「当店は一切の責任を負いません」と書いても、消費者との取引では責任の全部を免除する条項は無効です(消費者契約法8条。詳しくはアレルギー・食中毒・異物混入のページ)。事故が参加者の過失で起きた場合は、債務不履行なら民法418条、不法行為なら同法722条2項の過失相殺の考え方により、店と参加者の過失の割合で負担が分かれることもあります。規約では、免責の範囲を限定し、お客様の故意・過失による損害は賠償していただく旨も、あわせて書くのが一般的です。
ケータリングや出張提供を伴う宴会(お客様の指定する会場へ料理を届ける、あるいは会場で盛り付けて提供する)は、店内の宴会とは確認事項が増えます。調理を行う施設の営業許可(食品衛生法55条1項。飲食店営業は同法施行令35条1号)と、持ち出した後の食品の取扱い(運搬の温度管理、提供までの時間、再加熱の有無)を契約書面で整理します。出張先で調理や盛り付けをする場合の許可の取扱いは自治体により運用が分かれるため、管轄の保健所の案内を確認したうえで、書面の前提を決めます。食品の安全の基本は、食品衛生法6条が、腐敗・変敗したものや病原微生物に汚染されたおそれがあるものなどの販売や調理を禁じていることにあります。提供後の時間経過による傷みの責任は、テイクアウト・デリバリーのページの考え方と共通する部分があります。
宴会・貸切で起きがちなこと
- 「十名」で予約を受けたが、人数確定の期限を決めておらず、前日に半分に減って仕入れが無駄になった。
- 貸切の範囲が曖昧で、他のお客様が入って苦情になった。看板と案内の責任の所在が決まっていなかった。
- 内金を「予約金」とだけ書き、キャンセル時に返すかどうかで言い分が割れた。
- 飲み放題の時間の理解が食い違い、延長料金の請求で揉めた。
- 幹事個人の名前で予約を受けたが、請求書は会社宛にしたいと言われ、領収書の宛名が決まらなかった。
宴会・貸切の書類は、お客様向けの利用規約の一部としてまとめる方法と、団体予約専用の申込書兼確認書として別立てにする方法があります。個人のお客様の席予約と共通の規約に、団体予約の特則(人数確定、前受金、貸切)の節を加える形が実務ではよく見られます。トラブルになったときの順序はトラブルとよくある質問のページに、全体の書類の地図は全体像のページにまとめています。
よくあるご質問
幹事が個人名で予約し、会社の経費で払うと言っています。キャンセル料の規定はどちらの基準で考えればよいですか。
消費者か事業者かは名義だけでなく契約の実態で判断されます。判断が難しいときは、消費者契約法9条1項1号の平均的な損害の枠で説明できる水準にキャンセル料を整えておくと、どちらに当たると判断されても規定の有効性を説明しやすくなります。請求書の宛名と支払責任者は、予約の時点で確認して残します。
人数確定日より後に人数が減った場合、減った分を全額請求してよいですか。
確定人数を基礎に請求する組み立ては一般的ですが、「一切減らせない・全額」と硬く書くと、消費者との取引では平均的な損害を超える部分が無効とされる余地があります。食材の仕入れの取消しや他の予約への振替で免れた損害は差し引く、という考え方を条項に残すと、説明がしやすくなります。
前受金を「予約金」と呼んで受け取っています。キャンセル時に返さなくてもよいですか。
「予約金」の一語では、内金、手付、違約金のどれを意味するのかが分かりません。内金なら代金に充当して清算するのが基本で、違約金として没収するなら、その額が消費者契約法9条1項1号の平均的な損害を超えないことが必要です。名目と、返金・充当・没収の順序を書面に書きます。
貸切のお客様に、他のお客様を入れないと約束しました。当日、貸切の席の近くを通る別のお客様を断れますか。
貸切の範囲が書面にないと、断れる範囲が曖昧になります。店全体の貸切なのか、区画だけなのか、共用部分(通路、トイレ)の扱いはどうかを、予約時の確認書面に書いておきます。約束した範囲を店側が守らなかったときは、債務不履行(民法415条)の問題になります。
宴会の途中で参加者がけがをしました。規約に「一切責任を負わない」と書いてあれば免責されますか。
消費者との取引では、事業者の損害賠償責任の全部を免除する条項は消費者契約法8条により無効です。施設の管理に落ち度がなければ責任を問われない場合もありますが、免責の定めに頼らず、原因ごとに責任を整理しておく必要があります。免責の限界はアレルギー・食中毒・異物混入のページで扱います。
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本ページは一般的な情報提供です。個別の取引への当てはめは、営業の形態や契約の内容によって異なることがあります。書き方の例として紹介している内容は、契約書作成の実務でよく見られる書き方を整理した例で、特定の事業者や案件を示すものではありません。条文は e-Gov法令検索(法令API)で確認しています。参考: e-Gov法令検索 / 消費者庁 / 厚生労働省 / 個人情報保護委員会