キッチンカー・移動販売の契約:車両の賃貸借、営業許可、場所、売上の分け方

キッチンカーで営業するには、車両の状態、営業の許可、営業する場所の三つが揃う必要があります。車を借りる賃貸借契約書はこのうち車両しか決めていないのが普通です。賃料・保証金・整備・車検・保険、営業許可の確認、場所の確保、共同利用、解約までを整理します。

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賃貸借契約書に、営業許可の確認や場所の確保の責任が書かれていないと、許可が取れず営業できない間も賃料だけが発生し続けます。

このページの要点

  • 車両の賃貸借は、賃料・保証金・整備・車検・保険の分担と、返却の時刻や場所を具体的に書く。保証金の差し引きは根拠を明細で示す。
  • 営業許可は営業を営もうとする者が受け(食品衛生法55条1項)、施設の基準は都道府県の条例で定まる(54条)。誰が営業者かと、許可が受けられないときの賃料の扱いを決める。
  • 道路で場所を移動しないで営業する場合は、道路交通法77条の許可や道路法32条の占用許可が問題になり得る。場所の確保は借主の責任と書く。
  • 売上に応じた支払や貸主の共同利用を入れるときは、売上の報告、衛生の区分、食品事故の窓口と負担を別に決める。

結論:キッチンカーを借りる契約は、車両・営業許可・営業する場所の三つを別々に確かめる

キッチンカー(移動販売車)で営業する契約は、一見すると「車を借りる契約」です。しかし、車を借りただけでは営業できません。食べ物を調理して売る営業には、車両の状態、営業の許可、営業する場所という、性質の違う三つの条件が揃う必要があります。車両は貸主との契約で、営業許可は食品衛生法と自治体の基準で、場所は土地や道路の管理者との関係で決まります。貸主との賃貸借契約書は、このうち車両の部分しか決めていないのが普通です。

ここを取り違えると、「車は借りたが許可の名義が合わず営業を始められない」「営業許可は取れたが、出店できる場所がない」「イベントに出店したが、車の故障で営業できず、賃料だけ払い続けた」といった事態になります。賃貸借契約書に、許可の確認、場所の確保、故障時の賃料の扱いが書かれていないと、貸主と借主のどちらにも言い分があって決着がつきません。

営業開始前に確かめる三つの条件と、それぞれを決める書類

条件何で決まるか契約書で確認する点書類が足りないと起きること
車両貸主との賃貸借契約車両の特定、賃料、保証金、整備・車検・保険の分担、返却の条件故障や事故の費用を誰が負担するかで揉める。
営業許可食品衛生法と、都道府県(保健所設置市を含む)の条例による基準誰が営業者か、許可の確認の時期、許可が受けられない・失効したときの賃料車を借りても営業を始められず、賃料だけ発生する。
営業する場所土地や施設の管理者の承諾、道路の許可、イベント主催者との契約場所の確保の責任、出店料の負担、中止時の扱い営業できる場所が確保できず、収益が見込めない。

このページで押さえる四つの点

  • 車両の賃貸借は、賃料・保証金・整備・車検・保険の分担と、返却の条件を数字や期日で具体的に書く。
  • 営業許可は、営業を営もうとする者が受けるもので(食品衛生法55条1項)、基準は都道府県の条例で定まる(同法54条)。車両を貸す側と借りる側のどちらが営業者になるかを、契約の前に決める。
  • 道路など公共の場所で営業する場合は、道路交通法77条の道路使用の許可や道路法32条の道路占用の許可の問題になり得る。場所の確保は誰の責任かを契約書で決める。
  • 貸主が車両の一部を使う共同利用や、売上に応じた支払を組み込むときは、衛生の区分、売上の報告、事故の責任を別に決める。

なお、営業許可の申請手続そのものの中身は、このガイドでは扱いません。ここでは、契約書で確認しておく条項と、法律上の位置づけに絞ります。同じキッチンカーの営業でも、店舗を構えて運営を他人に任せる場合の費用や責任の分け方は運営を任せる契約のページで、食材の仕入れ条件は仕入れのページで扱っています。

車両の賃貸借で決めること:賃料・保証金・整備・車検・保険・返却

キッチンカーの賃貸借は、民法の賃貸借(601条以下)の規定が基本になります。車両は動産で、厨房設備を備え付けた特殊な車両である点を除けば、自動車の賃貸借と同じ枠組みで考えます。民法は、貸主(賃貸人)に賃貸物の使用・収益に必要な修繕をする義務を負わせ(606条1項)、借主(賃借人)が責めに帰すべき事由で必要になった修繕は貸主の義務の外としています。借主には、賃借物を受け取った後に生じた損傷(通常の使用による損耗と経年変化を除く)を、賃貸借の終了時に原状に復する義務があります(621条)。契約書で、どこまでが貸主の負担でどこからが借主の負担かを、車両に即して書き込む必要があります。

費用と手配の分担を決める項目

項目決めること貸主の負担とする例借主の負担とする例
賃料・支払方法月額か日額か、水道光熱の扱い、支払日、税込・税別の別車両の維持に係る定期的な費用賃料、振込手数料、遅延したときの損害金
保証金預け入れの金額、返還の時期、差し引ける範囲通常の損耗の分は差し引かない通常の使用を超える損傷、未払の賃料を差し引かれる
整備・修理日常点検、消耗品、故障の連絡方法、代替車両通常の整備、経年による故障借主の過失による損傷、日常の清掃
車検誰が手配し、費用を誰が負担するか、検査に出している間の扱い定期的な検査の手配と費用(例)借主の使用状況に起因する不具合の修理
保険自賠責、任意保険(対人・対物・車両)、PL保険の別と加入者車両についての保険営業中の食品事故に備える保険、設備の保険
返却場所、時刻、状態の確認方法、遅れたときの扱い返却場所の準備返却時の清掃、燃料や給排水の処理

車検(継続検査)は、道路運送車両法62条1項が、自動車の使用者が検査証の有効期間の満了後も自動車を使おうとするときに受けなければならないと定めています。賃貸借では、貸主と借主のどちらが「使用者」として車検証に記載されるのかで、手続の責任の所在が変わります。契約書の分担の定め(誰が手配し、費用は誰が負担するか)と、車検証の記載が食い違うと、期限切れや手配の漏れが起きたとき責任をめぐって争いになります。契約書は、車検の時期と、車検に出している間の営業の扱い(賃料の減額や日割の有無)まで書いておくと、実務上の混乱を防げます。借主の責めに帰することができない事由で車両の使用・収益ができなくなった部分があるときは、賃料は、その使えなくなった割合に応じて当然に減額されます(民法611条1項)。契約書で減額の割合や日割の基準を定めておくと、この原則を運用しやすくなります。

保険は、種類ごとに整理します。まず、自動車損害賠償保障法5条は、自動車は責任保険または責任共済の契約が締結されているものでなければ運行の用に供してはならないと定めています。いわゆる自賠責は、運行のための必須の保険です。次に、任意の自動車保険(対人賠償、対物賠償、人身傷害、車両保険)があります。さらに、営業中の食品による事故を補償する生産物賠償責任保険(PL保険)や、厨房設備の損害に備える保険は、自動車保険の対象外になることが一般的で、営業者側が別に加入するのが通常です。契約書では、保険ごとに「誰が加入し、誰が費用を負担し、保険金を誰が受け取るか」を書き分けます。この点が曖昧だと、事故の後に、保険が使えるのか、使えない場合の損害を誰が引き受けるのかで揉めます。

条文例保証金の返還に関する規定の書き方の一例

  1. 借主は、本契約の締結時に、保証金として○円(税込)を貸主に預け入れます。保証金には利息を付けません。
  2. 貸主は、本契約が終了し、車両の返還を受けた後、遅滞なく、保証金から借主の未払債務の額を差し引いた残額を借主に返還します。
  3. 貸主が保証金から差し引く場合は、差し引く金額とその算出の根拠を明細書により借主に示します。通常の使用によって生じた損耗と経年変化は、差し引きの対象としません。
  4. 保証金で足りない債務があるときは、借主は不足額を貸主の請求から○日以内に支払います。

民法622条の2第1項は、敷金(名目を問わず、賃借人の債務を担保する目的で交付する金銭)について、賃貸借の終了と賃貸物の返還を受けた時に、債務の額を差し引いた残額を返還するよう貸主に求めています。名称が「保証金」でも、担保の趣旨であれば、この考え方に沿って返還の条件を書くのが基本です。

書き方の例(一般的な例) 賃貸借契約でよくある曖昧な点

保証金の差し引き

よくある書き方修繕費を保証金から差し引くことがあります。
整えた書き方差し引く場合は、金額と算出の根拠を明細書で示す。通常の損耗は差し引かない。

理由差し引きの範囲を限定せず、根拠を示さない書き方は、返還の段階で争いになりやすい。

故障時の賃料

よくある書き方記載なし。
整えた書き方貸主の責めに帰すべき故障で、○日以上営業できなかった期間の賃料を、日割りで減額または免除する。

理由借主の責めに帰することができない事由で使えなくなった部分があるときは、賃料はその割合に応じて当然に減額されます(民法611条1項)。どの程度の故障をどの割合の減額とするかは、数字で決めておくと決着が早い。

返却場所と時刻

よくある書き方営業終了後、速やかに返却する。
整えた書き方営業終了後、当日の○時までに、貸主の指定する場所に返却する。遅れる場合は事前に連絡する。

理由「速やかに」「当日中」は人によって受け取り方が違います。時刻と連絡方法まで示すと、遅延の評価が揃う。

営業許可と契約書:誰が営業者か、許可を確認するのはいつか

飲食店営業やキッチンカーによる営業には、食品衛生法に基づく許可が必要です。食品衛生法54条は、都道府県が、公衆衛生に与える影響が著しい営業で政令が定めるものの施設について、条例で基準を定めなければならないとしています。政令(食品衛生法施行令35条)は、基準を定めるべき営業の一つに飲食店営業(1号)を挙げています。55条1項は、その営業を営もうとする者は、都道府県知事の許可を受けなければならないと定めます。つまり、許可を受けるのは「営業を営もうとする者」であり、施設(ここでは車両を含む営業の設備)の基準は都道府県の条例で定まります。条例は自治体ごとに異なるため、車両の構造や設備に関する細かな基準も、営業する地域の管轄の保健所で確認する必要があります。

この仕組みが、賃貸借契約に二つの問いを突きつけます。第一に、誰が営業者として許可を受けるのか。貸主が自分の名義で許可を持っている車両を借主が使って営業するのか、借主が自分の名義で許可を取るのか。営業の主体が誰かを、実態に合わせて整理しないと、許可の名義と実際の営業者が食い違います。第二に、許可はいつ確認するのか。契約の前、車両の引渡しの前、営業の開始の前、いずれの時点で、誰が、どの書面で確認するのかを決めておきます。

営業許可に関する確認の流れ(契約から営業開始まで)

契約前営業する地域の管轄の保健所で、車両の構造や設備の基準、必要な書類を確かめる。
契約誰が営業者になるか、許可を受けるのは誰か、許可が受けられなかったときの扱いを書く。
引渡し前車両が基準に適合するか、改造や設備の追加が必要かを確認する。費用の負担者を決める。
営業開始許可証を確認する。営業者の名義、営業の種類、有効期間を見る。
営業中・終了設備の変更や営業の譲渡があれば許可への影響を確認する。終了時の許可の扱いを決める。

許可の申請手続そのものは、このガイドの対象外です。契約書の側で、各段階の責任の所在と、許可が受けられなかったときの賃料の扱いを決めておく点に絞っています。

許可を受けた者が営業を譲渡したときなどは、食品衛生法56条が、営業を譲り受けた者が許可営業者の地位を承継し、遅滞なく都道府県知事に届け出なければならないと定めています。キッチンカーの賃貸借で、車両ごと営業の権利を引き継ぐ形(車両の譲渡、貸主の交代)をとる場合は、この承継の規定が関係し得ます。単純な車両の賃貸だけであれば、許可営業者の地位は移りませんが、契約書に「営業の譲渡」の意味合いが含まれていないかを、条項の趣旨に照らして確認します。

営業中に食品衛生法違反があると、都道府県知事は、営業者が同法6条(腐敗した食品の取扱いの禁止など)などに違反した場合に、許可を取り消し、営業の全部または一部を禁止し、または期間を定めて停止することができます(60条1項)。施設の基準に違反した場合は、施設の整備改善を命じ、許可を取り消し、営業を停止することもできます(61条)。こうした処分を受けたとき、賃貸借契約が自動的に終わるのか、賃料はどうなるのか、損害は誰が負担するのか。契約書に書かれていなければ、民法の一般の規定(債務不履行による損害賠償や解除)に頼るしかなく、予測が立ちません。

確認の問いと理由車両を借りる前の営業許可に関する確認

  1. 許可を受けるのは貸主か借主か。

    食品衛生法55条1項の許可は、営業を営もうとする者が受けます。営業の主体が借主なら、借主が許可を取る前提で契約し、貸主の許可を借りる形にしないのが基本です。

  2. 車両は、営業する地域の保健所の基準に適合しているか。

    基準は条例で定まり、自治体ごとに異なります。貸主が「他の地域で使っていた車両」を貸すときは、営業地域の基準に合うかを引渡し前に確認します。

  3. 許可が受けられなかった場合、賃料と契約はどうなるか。

    許可が取れず営業できない期間の賃料を借主が負担し続けるのは酷です。許可の取得を契約の条件にし、取得できない場合の解約と賃料の扱いを決めます。

  4. 営業停止などの処分を受けたとき、賃料と契約はどうなるか。

    借主の違反による処分なら借主が負担、車両の構造上の問題なら貸主が負担、といった原因別の整理が必要です。

書き方の例(一般的な例) 許可に関する条項の書き方

許可の確認

よくある書き方借主は、関係法令を遵守して営業する。
整えた書き方借主は、営業開始までに食品衛生法に基づく営業の許可を取得し、許可証の写しを貸主に提出する。許可が取得できないときは、借主は○日前までに書面で通知して契約を解約できる。

理由「関係法令を遵守」だけでは、許可を誰がいつ確認するのかが決まりません。取得と確認の手順を書くと、営業開始の遅れの責任が見えやすくなります。

処分を受けた場合

よくある書き方行政処分を受けた場合は、貸主は契約を解除できる。
整えた書き方借主の責めに帰すべき事由による営業の停止があったときは、貸主は催告のうえ解除でき、その間の賃料は借主が負担する。車両の構造に起因するときは、賃料を免除する。

理由処分の原因によって負担が変わる整理にしないと、貸主の一方的な解除に見える。

営業する場所:私有地・施設・イベント・道路で、必要な承諾が違う

キッチンカーの収益は、どこで営業できるかに大きく左右されます。しかし、車両の賃貸借契約書に、営業する場所の確保について書かれていることは多くありません。場所の確保が誰の責任かを書かないと、営業できる場所が見つからなかったときに、貸主に賃料の減額を求められるのかどうかが分かりません。

営業する場所の種類と、必要になる承諾

場所必要な承諾・許可契約書で決める点
私有地(商業施設の駐車場、空き地など)土地や施設の管理者の承諾。使用料の取決め承諾書面の取得者、使用料の負担、使用できる曜日や時間帯、ごみ・排水の処理
公共の施設・広場施設の管理者の許可。利用規程への従う義務利用規程の確認、申請の責任者、申請の期限、不許可の場合の扱い
イベント・催事主催者との出店の契約出店料の負担、売上の取扱い、中止時の返金、衛生の基準、搬入出の時間
道路道路使用の許可、場合によっては道路占用の許可申請は誰が行うか、不許可・取消しの場合の扱い

道路で営業する場合は、法律上の許可が問題になります。道路交通法77条1項3号は、場所を移動しないで、道路に露店、屋台店その他これらに類する店を出そうとする者は、その場所を管轄する警察署長の許可を受けなければならないと定めています。また、道路法32条1項6号は、道路に露店、商品置場その他これらに類する施設を設け、継続して道路を使用しようとする場合には、道路管理者の許可を受けなければならないと定めています。キッチンカーが道路上で停車して営業する形が、これらの規定の対象になるかどうかは、場所、時間、営業の態様によって判断が分かれます。契約書の側では、道路での営業を予定している場合は、許可の要否の確認と申請の責任者を決め、許可が得られないときの賃料と契約の扱いを書いておくことになります。

私有地や商業施設の敷地で営業する場合は、法律の許可というより、土地や施設の管理者との契約の問題です。管理者の承諾の形(口頭、書面、使用許可証)、使用料の額と支払方法、使える時間、電源・給排水・ごみの扱い、騒音や臭いへの苦情への対応、営業の終了後の清掃を、場所の管理者との書面で整理します。賃貸借契約書では、借主が管理者の承諾を得る責任を負うこと、貸主は場所を保証しないことを、はっきり書いておきます。逆に、貸主が営業する場所を紹介する場合は、紹介した場所で営業できなかったときの責任が貸主に残らないよう、紹介の趣旨(保証ではない)を書きます。

イベントや催事への出店は、主催者との契約が別にあり、出店料、売上の取扱い、中止の場合の扱い、衛生管理の基準が定められます。主催者側が出店者に対して負う責任の限定(中止になっても出店料を返さない、といった定め)は、賃貸借契約の貸主には及びません。したがって、イベントが中止になった場合に、貸主への賃料が発生し続けるのか、借主が主催者から出店料を取り戻せないのかを、通しで考えておく必要があります。賃貸借契約で、イベントの中止や天候による不開催を理由とする賃料の減額を定めるのは通常ではありませんが、借主としては、出店料の返還条件と賃料の支払の期日を揃えておくことが、資金繰りの面で重要です。

共同利用と売上の分け方:固定の賃料か、売上に応じた支払か

車両の賃貸借には、賃料の決め方に二つの型があります。毎月決まった賃料を払う固定型と、売上に応じて貸主へ支払う売上連動型です。また、これらを組み合わせた併用型もあります。どの型を選ぶかで、貸主と借主のリスクの分担が変わり、必要な条項も変わります。

賃料の決め方の三つの型

固定型

毎月(または日ごと)の賃料を一定額とする

  • 借主は売上が少なくても賃料を払う
  • 貸主は売上を確認する必要がない
  • 故障や営業停止の期間の賃料の扱いを決めておく

売上連動型

売上の一定割合を貸主に支払う

  • 売上の報告方法、帳簿の確認、締め日と支払日を決める
  • 売上の定義(税込・税別、返品や割引の控除)を明確にする
  • 貸主が売上を確認する権利と、借主の報告義務のバランス

併用型

最低額+売上に応じた上乗せ

  • 最低額の水準と、上乗せの割合の根拠を整理する
  • 最低額が事実上の固定賃料になるため、固定型の条項も必要
  • 契約書で「最低保証」の趣旨を明記する

売上連動型は、借主が貸主に売上を報告する関係になり、貸主が運営に近い立場に入ります。その場合、賃貸借というより、事業を一緒に行う契約(業務の委託や提携)の性質を帯びることがあり、責任の分け方は運営委託の考え方に近づきます。

貸主が車両の一部を使う共同利用は、イベント出店で見られる形です。貸主が、借主の営業時間の一部または車両内の一部のスペースを使い、自分または第三者の商品(たとえば飲み物)を販売する条件を付けます。共同利用を認める場合の条項は、次の点を押さえます。

共同利用の条件で決める項目

  • 貸主が使える時間と範囲(車両のどこを、いつ使うか)。借主の営業を不当に妨げないという一般的な書き方だけでなく、具体的な範囲を書く。
  • 販売する品目と、借主の商品との区分。アレルゲンの混入や表示の混同を避けるための手順(器具の分離、掲示)。
  • 売上の分け方。共同利用による売上は貸主のものか、借主と分けるか。分ける場合の割合と計算方法、報告の方法。
  • 衛生と許可。貸主が販売するものの営業許可を誰が持つのか、食中毒が起きたときの責任の窓口はどちらか。
  • イベントごとの協議に任せる場合は、協議が整わないときにどうするか(共同利用をしない、従前の条件による、など)。

共同利用でとくに注意したいのは、食品事故の責任の線引きです。貸主の持ち込んだ飲み物が原因でお客様が体調を崩した場合と、借主の調理した食べ物が原因の場合で、責任の窓口が異なるはずですが、お客様から見れば「その車で買った」としか分かりません。お客様に対しては、営業者として車両に表示された事業者が窓口になるのが通常です。そのうえで、貸主と借主の間で、原因に応じた求償(負担の調整)を契約で決めておきます。責任の原因別の分け方は、運営委託のページの考え方が参考になります。アレルギーや食中毒が起きたときの初動と免責の限界は、アレルギー・食中毒・異物混入のページで整理しています。

事故・食中毒・更新と解約:終わらせ方まで書いておく、起きがちなこと

移動販売には、車両の事故(営業中や移動中の衝突、車両の損傷)と、食品の事故(食中毒、異物混入)という二種類の事故があります。車両の事故は、自動車保険と、借主の過失による修理費の分担で整理します。食品の事故は、営業者としての責任が問われ、貸主の車両の設備に原因がある場合(冷蔵設備の不具合など)を除き、借主が負うのが原則です。設備に原因がある場合は、貸主の責任との切り分けを定めます。冷凍庫・冷蔵庫の不具合で食材が傷んだ場合に、貸主の管理責任を問えるのか、借主の保険でカバーできるのかも、あらかじめ整理しておくべき論点です。製造物責任法は、製造または加工された動産の欠陥による被害について、製造業者等の責任を定めています(同法2条・3条)。調理して提供する料理は、加工された動産にあたり得ます。

契約の期間と更新も、車両の賃貸借の特徴的な論点です。民法617条は、期間の定めのない賃貸借の解約の申入れについて、動産の賃貸借は解約の申入れの日から1日を経過することで終了すると定めています(同条1項3号)。したがって、期間を定めない契約では、貸主からも借主からも、ごく短い予告で契約を終わらせることができます。営業の準備と資金を投じる借主にとっては、予告が短すぎて不安定です。契約書で期間を定め、更新と中途解約の予告期間を決めるのが通常です。更新の定めがあるとき、貸主が更新を拒絶できる条件を「借主の使用状況に照らして不適切な場合」とする書き方もありますが、基準が主観的になりやすいので、清掃の頻度、返却の遅延の回数、保守の記録など、客観的な事実を基準にします。期間が満了した後も借主が使用を続け、貸主がそれを知りながら異議を述べないときは、従前と同一の条件で更に賃貸借をしたものと推定されます(民法619条1項)。

契約の解除は、民法の一般の規定(541条の催告による解除、542条の催告によらない解除)によります。契約書では、解除事由を具体的に書きます。たとえば、賃料の支払の遅れが続く場合、無許可で営業した場合、車両を目的外に使った場合、保険に加入していない場合などです。解除の後は、車両の返却、保証金の清算、営業許可に関する後処理(設備の撤去や許可の廃止)が必要になります。この三つの手順を、解除の条項とセットで書いておきます。

車両の賃貸借で起きがちなことと、押さえる点

  1. 契約前

    車両の状態を見ないまま契約し、引渡しの後に設備の不具合が見つかる。

    押さえる点引渡しの時に、設備を一つずつ動かして確認し、写真や書面で記録する。

  2. 許可の取得

    営業地域の基準に合わない車両で、許可が取れない。

    押さえる点契約前に基準を確認する。許可が受けられない場合の解約と賃料を決める。

  3. 営業中

    冷蔵設備が故障して食材が傷み、営業を中止する。

    押さえる点故障の連絡先と対応、営業できない期間の賃料の扱い、食材の損害の負担を決める。

  4. イベント

    悪天候で主催者が中止し、賃料だけが残る。

    押さえる点出店料の返還条件と賃料の支払日を整理する。中止の連絡方法を決める。

  5. 返却

    返却時に傷の有無で揉める。

    押さえる点返却時に貸主と借主が立ち会い、状態を記録する。保証金の差し引きは明細で示す。

キッチンカーの契約で起きがちなこと

  • 営業許可は借主の名義で取る前提だったのに、貸主の許可に乗る形で営業を始め、名義と実態が合わなくなった。
  • 車検の手配を誰がするのか決めておらず、期限が切れて営業できない期間が出た。
  • 保証金から差し引く修理費の根拠が示されず、返還の段階で争いになった。
  • 営業する場所は借主が確保する前提なのに、貸主が場所を紹介したことで、確保の責任が貸主にあるかのような誤解が生じた。
  • 共同利用の販売で食品事故が起き、お客様への窓口が決まっておらず対応が遅れた。

全体の書類の地図は全体像のページに、トラブルが起きたときの確認の順序はトラブルとよくある質問のページにあります。

よくあるご質問

キッチンカーを借りれば、すぐに営業できますか。

できません。営業には食品衛生法に基づく許可が必要で(55条1項)、基準は都道府県の条例で定まります(54条)。車両を借りる契約とは別に、誰が営業者として許可を受けるか、営業する地域の基準に車両が適合するかを確かめる必要があります。許可が受けられなかったときの賃料と契約の扱いも、契約書で決めておきます。

貸主が持っている営業許可を使って、私が営業してよいですか。

許可は営業を営もうとする者が受けるものです(食品衛生法55条1項)。営業の主体が借主であれば、借主が許可の名義人になるのが自然です。貸主の許可を使う形は、営業者が誰かの整理が必要で、自治体の運用にも関わるため、営業する地域の保健所で取扱いを確認し、その結果を契約書に反映します。

保証金から修理費を差し引かれました。根拠を示してもらえますか。

契約書に、差し引く場合は金額と算出の根拠を明細書で示す旨の定めがあれば、それに従って請求できます。定めがなくても、民法622条の2の敷金の考え方に沿えば、賃貸借が終了し車両の返還を受けたとき、債務の額を差し引いた残額を返すのが基本で、差し引きの内訳は借主が確かめられるようにしておくべきです。通常の使用による損耗と経年変化は借主の原状回復の対象外です(民法621条)。

道路の脇に停めて営業してよいですか。

道路上で場所を移動しないで露店や屋台に類する営業をする場合は、道路交通法77条1項3号の許可が問題になり、道路に露店などを設けて継続して使用する場合は、道路法32条の道路占用の許可が問題になります。許可の要否は、場所と営業の態様で変わります。契約書では、許可の確認と申請の責任者、不許可のときの賃料と契約の扱いを決めておきます。

期間を決めずに車両を借りています。貸主から突然、返してほしいと言われました。

民法617条1項3号は、動産の賃貸借で期間の定めがないときは、解約の申入れの日から1日で終了すると定めています。つまり、貸主から短い予告で返却を求められることがあり得ます。営業の準備に資金を投じる借主には不安定な状態なので、期間と、更新・中途解約の予告期間を契約書で決めるのが一般的です。

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本ページは一般的な情報提供です。個別の取引への当てはめは、営業の形態や契約の内容によって異なることがあります。書き方の例として紹介している内容は、契約書作成の実務でよく見られる書き方を整理した例で、特定の事業者や案件を示すものではありません。条文は e-Gov法令検索(法令API)で確認しています。参考: e-Gov法令検索 / 消費者庁 / 厚生労働省 / 個人情報保護委員会

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