このページの要点
- 取引基本契約で、発注・納品・検品・返品・価格・支払を決める。生鮮は締め時刻、納品時間帯、温度管理、価格の改定手続を入れる。
- 受領したら遅滞なく検査し、不適合は直ちに通知する(商法526条)。現場の担当者に検品の権限と連絡の方法を持たせる。
- 産地・品質の表示は、規格書や産地の証明を受け取る約束と、仕様変更の事前通知がなければ維持できない。
- 仕入先の食材が原因の事故に備え、調査協力、記録の保存、費用の負担、PL保険、回収時の連絡を契約書に書く。
結論:食材の仕入れは、口約束で回るうちは良く、事故と価格の変動の局面で書面の差が出る
飲食店の仕入れ取引は、長年の付き合いと電話やメッセージの注文で成り立っていることが少なくありません。毎日の発注を、いちいち契約書にする必要はないとも言えます。ところが、納品された食材が傷んでいた、注文と違う産地のものが届いた、欠品が続いて営業に穴があいた、仕入れ値が急に上がった、仕入れた食材が原因でお客様が体調を崩した。こうした局面になって初めて、「どこまで約束していたのか」が問われます。その時、書面が一枚もなければ、記憶と言い分の勝負になります。
このページは、飲食店が食材を仕入れる側の立場で、継続的な取引の基本条件、検品と通知、欠品や価格の変動、産地・品質の保証と表示の裏付け、仕入先の事故が自店のお客様に及んだときの求償を整理します。食品の製造を他社に任せる取引(製造委託)は、このガイドの対象外です。仕入れる側の自店で調理し、お客様に提供するための取引に絞っています。
このページで押さえる四つの点
- 継続的な取引の基本条件(発注の方法、納品、検品、返品、支払)を、取引基本契約か取引条件書で定める。個々の注文は注文書やメッセージで足りるが、条件はあらかじめ書面にする。
- 納品された食材の検査と通知は、商人間の売買では商法526条が厳しい期限を課す。受け取ったら遅滞なく検査し、不適合があれば直ちに通知する運用を、契約書と現場の双方で決める。
- 産地・品質を示す表示(メニュー、店内掲示)は、仕入先から裏付け資料を受け取る約束がなければ維持できない。仕様の変更の事前通知も約束に含める。
- 仕入先の食材が原因でお客様に被害が及んだ場合の調査協力、記録の保存、費用の負担、保険を、先に決めておく。
仕入れ取引には、売買の規定が基本として適用されます。民法555条は、売買を、当事者の一方がある財産権を相手方に移転することを約し、相手方がこれに対してその代金を支払うことを約することによって効力を生じる契約と定めています。食材の仕入れは、注文と承諾で成立し、納品によって履行され、代金の支払で完了します。契約の成立に書面などの方式は要らないため(民法522条2項)、電話やメッセージの注文でも契約は成立します。そこで、この基本の枠組みに、継続取引に特有の条件を足していくのが、取引基本契約の役割です。
食材の仕入れの話は、お客様向けの書類にも直結します。産地や「手作り」などの表示の言い方はメニュー・価格の表示のページに、アレルギーの申告を受けるときの原材料の把握はアレルギー・食中毒・異物混入のページにまとめています。
継続的な仕入れの基本条件:発注・納品・検品・返品・支払
取引基本契約(継続的に同種の取引を行うときの共通の条件を、あらかじめまとめて定める契約)には、飲食店の仕入れに合わせた項目が必要です。生鮮食品は、日々の相場で品質と価格が変わり、納品の時間帯が営業の準備に直結し、保存がきかないためです。一般的な工業製品の売買契約をそのまま使うと、実情に合わない条項が混ざります。
取引基本契約で決める項目
| 項目 | 決めること | 飲食店に特有の注意 |
|---|---|---|
| 発注の方法 | 電話、メッセージ、発注システムのどれか。注文の確定の時点 | 締め時刻(前日の何時まで)、発注の記録の保存 |
| 納品 | 日時、場所、受領者、温度管理が必要な品の扱い | 納品の時間帯が開店準備に間に合うこと、冷蔵・冷凍品の受け渡し温度 |
| 検品 | 受領時の検査の方法と期限、不適合を見つけたときの連絡先 | 鮮度の判断基準、写真の記録、現場の担当者の権限 |
| 返品・交換 | 返品できる事由、期限、費用の負担 | 生鮮は返品が難しいため、交換や値引の対応を決める |
| 価格 | 単価の決め方、改定の手続、最低注文数量 | 相場の変動の扱い(日次、週次、月次の改定) |
| 支払 | 締日、支払日、方法、遅延したときの損害金 | 締めと支払の間隔、税込・税別の別の明記 |
| 所有権・危険 | 所有権が移る時点、紛失や破損の責任の境 | 納品後の保管中の傷みの責任 |
仕入れ取引の標準的な流れ(発注から支払まで)
発注と通知は、後から確認できる形で残すのが基本です。電話で済ませた場合も、その後に確認のメッセージを送っておくと、争いになったときの証拠になります。
商人間の売買(会社や個人事業主の間の取引)には、商法526条が適用されます。同条1項は、買主が目的物を受領したときは、遅滞なく検査しなければならないと定めます。同条2項は、検査により目的物が種類、品質または数量に関して契約の内容に適合しないことを発見したときは、直ちに売主に通知しなければ、履行の追完の請求、代金の減額の請求、損害賠償の請求及び契約の解除ができなくなると定めます。直ちに発見できない不適合は、買主が6か月以内に発見したときも同様です。ただし、売主が悪意であった場合は適用されません(同条3項)。
この規定は、飲食店にとって実務上の重い意味があります。仕入れた食材の不適合(傷み、異物、数量不足、規格違い)は、受け取った時点で検査し、発見したら直ちに通知しないと、あとからお金を取り戻す権利を失うおそれがあるということです。とくに、納品の際に受領を担当する人が、忙しさのあまり検品をせずに受け取る運用は、危険です。納品時の確認手順(温度、数量、賞味・消費期限、表示)を決め、異常があれば写真付きで連絡することを現場のルールとします。なお、民法566条は、売主が種類または品質に関して契約の内容に適合しない目的物を引き渡した場合、買主がその不適合を知った時から1年以内にその旨を売主に通知しないときは、履行の追完の請求などができなくなると定めています。商人間の売買では、商法526条の厳しい期限が、実務上は先に問題になります。
確認の問いと理由納品・検品の運用で確認すること
受領する人は、検品の権限と判断の基準を持っているか。
受領者が「受け取るだけ」の立場では、不適合の通知が遅れます。傷みや数量の確認と、その場で連絡する権限を持たせます。
異常があったとき、誰に、どの方法で連絡するのか。
商法526条2項の「直ちに」の通知を実際に行える連絡先と方法を、取引基本契約か取引条件書に書いておきます。
納品書と実際の数量が違うとき、受領印を押してよいのか。
押す前に不足や不適合を書き込むか、受領を保留します。押した後では、数量の争いが不利になりやすいです。
冷蔵・冷凍品の温度は、受領時に確認できるか。
温度の確認方法(温度計、記録)を決め、基準を外れたときの返品や交換の扱いを書きます。
欠品・規格外・納品遅れ・価格の改定・最低数量
飲食店の仕入れで頻繁に起きるのが、欠品と納品遅れです。天候不順で入荷が減った、仕入先の都合で当日の納品ができなくなった。こうした事態に備えて、あらかじめ代替品の扱いと費用の負担を決めておかないと、営業に支障が出て、お客様に迷惑をかけます。
書き方の例(一般的な例) 欠品・納品遅れの書き方
欠品の連絡
理由連絡が遅れると、店は代替の手配ができません。「判明した時点で直ちに」と、連絡の手段と目安の時刻を書くと、実効性が上がります。
代替品
理由店の承諾なしに代替品を納品されると、メニューの表示と食い違う、アレルゲンが変わる、といった問題が起きます。承諾制にしておきます。
納品遅れの責任
理由一方的な免責は、仕入先の責めに帰すべき事由による遅れまで店が負担する形になる。責任の有無は、民法415条の考え方(責めに帰することができない事由の有無)に合わせる。
欠品や遅れが、特定の日時の営業に必要な食材に関わるときは、契約の解除の考え方も関係します。民法542条1項4号は、契約の性質または当事者の意思表示により、特定の日時または一定の期間内に履行をしなければ契約をした目的を達することができない場合において、債務者が履行をしないでその時期を経過したとき、債権者が催告なしに直ちに契約を解除できると定めています。たとえば、宴会やイベントの料理に使う食材を、その日のために注文していた場合、当日の朝までに納品されなければ、後から納品されても意味がありません。このような「当日限りの注文」であることを、注文書に書いておくと、解除や損害賠償を求めるときの根拠になります。宴会の料理の準備に関する論点は宴会・貸切のページで扱っています。
価格の改定は、生鮮食品の取引で、もっとも話し合いが必要な点です。相場に連動して日々の価格が変わる品と、あらかじめ決めた単価で取引する品を分け、改定の手続を決めておきます。改定の通知を、実施の何日前までに、どの方法で行うのか。通知した価格に同意しないときは、注文を取りやめられるのか。一方的に値上げを通知し、同意しなければ取引を止めるという運用は、飲食店にとって営業の継続が危うくなります。したがって、改定の通知期間を置き、その期間内に店が注文の取りやめや他の仕入先への切り替えができるようにしておくのが、バランスのとれた書き方です。
価格の決め方の三つの型
固定単価型
一定期間、単価を固定する
- 店は費用の見通しを立てやすい
- 仕入先は相場の高騰時のリスクを負う
- 改定の時期と手続を決めておく
相場連動型
市場の価格に連動して日々変える
- 基準とする相場(どの市場の、どの価格か)を特定する
- 連動の計算方法と上限・下限の有無を決める
- 店は価格を確認する方法を持つ
期間改定型
週次・月次で価格を見直す
- 改定の通知期間を決める
- 改定に同意しないときの扱い(取引の停止、注文の取りやめ)
- 見直しの根拠となる資料の示し方
最低数量(これ以上でなければ注文を受けない数量)や、まとめ買いの条件も、小規模な店には負担になりやすい項目です。最低数量を満たさないときの追加料金、配送の頻度、閉店時間を考えた納品の時間帯を、事前に確認します。逆に、仕入先から見れば、少量の注文や不規則な注文は効率が悪いため、最低数量や発注の締め時刻を設けるのは自然です。一方的に厳しい条件を受け入れるのではなく、実態と見合う水準を話し合って、書面にします。
産地・品質の保証と、表示の裏付け資料を受け取る約束
メニューに「国産」「地元産」「自家製」「天然」といった表示を載せている店は、その表示が事実であることを仕入れの段階で押さえる必要があります。表示の責任は、最終的にお客様に提供する店にあるからです。景品表示法5条1号は、商品または役務の品質、規格その他の内容について、一般消費者に対し、実際のものよりも著しく優良であると示す表示であって、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められるものを禁じています。仕入先から「国産」と聞いて表示したが、実際は違った、という場合でも、表示した店が不当表示の問題に直面し得ます。内閣総理大臣は、同法5条に違反する行為があるときは、措置命令を出すことができます(同法7条1項)。
食品衛生法20条は、食品、添加物、器具または容器包装に関して、公衆衛生に危害を及ぼすおそれがある虚偽の又は誇大な表示または広告をしてはならないと定めています。この規定に違反した場合、内閣総理大臣または都道府県知事は、営業者に対し、必要な処置をとることを命じることができます(同法59条2項)。産地や原材料の表示の誤りが、公衆衛生の観点(アレルゲンの記載漏れなど)にかかわる場合には、この規定も意識する必要があります。
仕入先から受け取っておく資料と約束
- 商品の規格書(原材料、添加物、アレルゲン、産地、賞味期限・消費期限、保存方法)。更新があれば、その都度の提出。
- 産地や品質の根拠となる証明(産地証明、等級の証明など)を、求めに応じて提出する約束。
- 仕様(原材料、製造方法、産地)を変更するときの事前の通知。変更後の最初の納品までに十分な期間をとる。
- 賞味・消費期限の残存期間の基準(納品時点で、全期間のどれだけが残っていること)。
- 納品ロットの識別(ロット番号、製造日)が分かるようにして、記録を一定期間保存すること。
食品表示基準は、容器包装に入れられた加工食品の表示について定めていますが、設備を設けて飲食させる場合(店内での飲食提供)には、一部の規定を除き適用されません(食品表示基準1条ただし書)。そのため、店内で調理して提供する料理には、加工食品としての食品表示基準の義務表示は直接には適用されません。一方で、持ち帰り用に容器包装に入れて販売する場合は、別の考え方が必要になることがあります(詳しくはテイクアウト・デリバリーのページ)。仕入れる側として、仕入れた加工食品の容器包装の表示が正しいことを確認する、という観点は、いずれの場合にも共通します。
民法の売買の規定では、引き渡された目的物が種類、品質または数量に関して契約の内容に適合しないとき、買主は、履行の追完(目的物の修補、代替物の引渡しまたは不足分の引渡し)を請求できます(562条1項)。追完がされないときは、代金の減額を請求できます(563条)。表示に使う産地や品質は、契約の内容に含まれていたかどうかがまず問題になります。そこで、注文書や取引基本契約に、産地・品質の指定を書いておく意義があります。「国産」で注文したのに別のものが届いたのは、契約の内容に適合しない引渡しです。
仕入先の事故が自店のお客様に及んだとき:調査の協力・記録・求償・保険
仕入れた食材が原因で、お客様が食中毒を起こした、異物が入っていたという場面は、飲食店にとってもっとも重い事態です。お客様に対しては、食材を提供した店が責任の窓口になります。店は、お客様の被害の対応を行い、その後に、原因を作った仕入先に負担を求めることになります。この求償(店が負担した分を仕入先に請求すること)を実現できるかどうかは、仕入れの段階の契約書と記録にかかっています。
仕入れ食材が原因となった事故の流れと、押さえる点
- 疑いの発生
お客様から体調不良の連絡があり、食材が疑われる。
押さえる点提供した食材の仕入れ日、ロット、納品書を確認する。残っている食材を保管する。
- 原因の調査
店、仕入先、保健所の見立てが分かれる。
押さえる点仕入先に調査の協力を求める。仕入先の製造・保管の記録の開示を求める。
- お客様への対応
治療費や休業損害の話になる。
押さえる点店がお客様に対応する。費用の一時負担と、仕入先への求償の見通しを整理する。
- 回収・公表
同じロットの食材が他にも出ている。
押さえる点食品衛生法58条の回収の届出が必要な場合があることを確認する。仕入先と連絡を取る。
- 求償
仕入先が、自社の責任を争う。
押さえる点契約書の責任条項と、検品・保管の記録が根拠になる。
製造物責任法は、製造または加工された動産の欠陥により他人の生命、身体または財産を侵害したときの、製造業者等の賠償責任を定めています(2条・3条)。仕入先が食材を製造・加工した者であれば、その仕入先に製造物責任が及ぶ可能性があり、店が自店の料理について責任を負った場合に、仕入先に対する負担の請求の根拠にもなり得ます。ただし、農産物や水産物などの未加工品は、製造または加工された動産に当たるかどうかが問題になります。いずれにしても、法律上の責任の有無に頼るのではなく、契約書で、仕入先が自社の責めに帰すべき事由で生じた損害を負担することを明記しておくと、整理しやすくなります。製造物責任法6条は、製造物の欠陥による賠償責任については、同法の規定のほか民法の規定による、と定めており、民法の債務不履行責任(415条)の枠組みでも整理されます。
条文例仕入先の責任と協力に関する規定の書き方の一例
- 仕入先が納入した食材が原因で、店のお客様に食中毒、異物混入その他の被害が生じた場合、仕入先は、原因の調査に協力し、必要な記録(製造・保管・出荷の記録、ロットの情報)を店に開示します。
- 前項の被害が、仕入先の責めに帰すべき事由により生じたときは、仕入先は、店がお客様に対して負担した合理的な範囲の治療費、見舞金、その他の損害を賠償します。
- 仕入先は、生産物賠償責任保険(PL保険)に加入し、加入の事実を店に示します。
- 仕入先は、納入した食材について、食品衛生法その他の法令に基づく回収の必要が生じたときは、速やかに店に連絡し、回収に協力します。
店の側の記録(検品、保管の温度、調理)も、求償の場面で必要になります。仕入先の責任を主張するには、店の保管や調理に問題がなかったことを示す必要があるからです。
PL保険(生産物賠償責任保険)は、製造・販売した製品の欠陥による賠償責任を補償する保険です。仕入先に加入を求める約束を契約書に置くと、仕入先に支払能力がない場合でも、被害の補償が確保されやすくなります。ただし、保険の補償範囲や免責金額は契約ごとに違うため、加入の事実の確認とあわせて、補償の内容の確認も必要です。
ネット注文・委託販売の仕入れ、契約書にしておく範囲、起きがちなこと
仕入れの形は、取引基本契約を結んだ継続的な仕入れだけではありません。ネットの仕入れサイトでの注文、市場での都度の購入、商品を預かって売れた分だけ精算する委託販売など、形はさまざまです。それぞれ、書面の要否と、押さえる点が違います。
仕入れの形ごとの注意
| 仕入れの形 | 特徴 | 書面で押さえる点 |
|---|---|---|
| 取引基本契約による継続仕入れ | 同じ仕入先から継続的に買う | 基本条件、価格の改定、検品、事故の責任 |
| ネットの仕入れサイト | 利用規約に同意して注文する | サイトの規約が優先するため、返品・欠品・事故の責任の範囲を読んで確認する。必要なら別途の覚書で補う。 |
| 市場・卸での都度購入 | 現場で現物を見て買う | 納品書・領収書を保存し、産地の確認は購入時に行う。 |
| 委託販売・預かり販売 | 商品を預かり、売れた分を精算する | 所有権の帰属、在庫の管理責任、精算の方法、クレームの費用分担。 |
委託販売(商品を預かって店頭などで販売し、売れた分を精算する取引)は、飲食店が物販を併設する場合などに見られます。この形では、クレーム対応の費用を、原因によって分ける書き方が合理的です。商品の品質、表示、内容量、賞味期限に起因する場合は、商品を供給した側が負担し、販売の方法、保管、取扱い、広告表示に起因する場合は、販売した側が負担する、という整理です。店は、商品の保管(温度管理など)と販売の方法については責任を負いますが、商品自体の欠陥まで負う立場ではありません。この考え方は、一般的な飲食店の仕入れにも通じます。
クレームが生じたときの報告の期限も、重要です。クレームの内容、発生日、対応状況を、一定の期間内に書面で相手方に報告し、協議することを定めておくと、対応の遅れで被害が広がることを防げます。また、返品・交換・返金・配送の費用、調査の費用、訴訟の費用の範囲を、どちらが負担するのかを定めます。
書き方の例(一般的な例) 委託販売の費用負担の書き方
クレームの費用
理由原因に関係なく片方が全額負担する書き方は、実態とずれる。原因別に分けると、納得感があり、紛争になりにくい。
報告の期限
理由「報告する」だけでは、遅れたときに責任を問えません。期限と方法を書くと、初動が揃います。
仕入れ取引で起きがちなこと
- 電話で注文を受けてもらっていたが、検品の記録も通知も残しておらず、傷んだ食材を返品できなくなった。
- 価格改定の通知が突然で、同意しないと取引を止めると言われ、他の仕入先を探す余裕がなかった。
- 「国産」と聞いてメニューに載せたが、産地を示す資料がなく、表示を裏付けられなかった。
- 仕入先の食材が原因と疑われる事故が起きたが、ロットの記録がなく、求償ができなかった。
- 代替品が承諾なしに納品され、アレルゲンの情報が変わっていたことに気づかず提供した。
書面の整え方は、すべての仕入先に同じ水準を求める必要はありません。取引額が大きい仕入先、生鮮の主力、お客様の安全にかかわる食材(生食、アレルゲンを含む加工品、加熱が不十分になりやすいもの)から優先して、取引基本契約か取引条件書を整えます。トラブルが起きたあとの確認の順序はトラブルとよくある質問のページに、全体の書類の地図は全体像のページにあります。
よくあるご質問
仕入先との取引を、口約束のまま続けています。契約書は必須ですか。
契約は書面がなくても成立します(民法521条は契約の締結と内容の自由を定めています)。ただし、検品の期限、価格の改定、欠品、事故の責任といった条件は、書面がなければ争いになったときに立証が難しくなります。取引額が大きい仕入先や、お客様の安全にかかわる食材から、取引基本契約か取引条件書を整えるのが現実的です。
納品された食材が傷んでいました。いつまでに連絡すればよいですか。
商人間の売買では、商法526条により、受領したら遅滞なく検査し、不適合を発見したら直ちに売主に通知しないと、追完の請求や代金の減額、損害賠償、解除ができなくなります。直ちに発見できない不適合は6か月以内に発見したときも同様です。傷みに気づいたら、写真を撮り、すぐに連絡します。
仕入先が突然、値上げを通知してきました。受け入れなければなりませんか。
契約書に価格改定の手続の定めがあればそれに従い、なければ一方的な値上げが当然に有効になるわけではありません。通知から実施までの期間、同意しないときの扱いを、取引基本契約で決めておくと安心です。決まっていない場合は、まず値上げの根拠を確認し、書面で協議します。
「国産」と書いて仕入れた食材が、別の産地のものでした。表示した店の責任ですか。
表示の責任は、お客様に提供する店にあります。景品表示法5条1号は、品質や内容について実際より著しく優良と示す表示を禁じています。仕入先に対しては、契約の内容に適合しない引渡しとして追完や代金の減額などを求められますが、表示の誤りへの対応(訂正、返金)は店が行います。裏付けの資料を受け取る約束が重要です。
仕入れた食材が原因でお客様が体調を崩したとき、仕入先に費用を請求できますか。
契約書に仕入先の責任と調査協力を定めていれば、それが根拠になります。定めがなくても、民法の債務不履行(415条)や、製造物責任法に基づく責任の枠で整理できる場合がありますが、原因の特定が必要です。ロットの記録、検品の記録、保管の温度の記録を残しておくことが、求償を実現する前提になります。
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本ページは一般的な情報提供です。個別の取引への当てはめは、営業の形態や契約の内容によって異なることがあります。書き方の例として紹介している内容は、契約書作成の実務でよく見られる書き方を整理した例で、特定の事業者や案件を示すものではありません。条文は e-Gov法令検索(法令API)で確認しています。参考: e-Gov法令検索 / 消費者庁 / 厚生労働省 / 個人情報保護委員会