このページの要点
- 判断は「解除の事由、時期等の区分に応じ」て行われるため、段階ごとに根拠が要る(消費者契約法9条1項1号)。
- 損害は、仕入れ済み食材、仕込み、個別に手配した品、空席の逸失利益(売上ではなく利益)に分けて見立てる。
- 条件は申込みの前に示し、確認メールにも再掲する。説明を求められたら算定の根拠の概要を説明するよう努める(9条2項)。
- 受取日の前に取消しの連絡があれば解除として9条1項1号の平均的な損害で、連絡なく受取に来ない場合は民法の受領遅滞(413条)と危険の移転(567条2項)で考える。
結論:キャンセル料は「時期の区分ごと」に「平均的な損害」で測る
飲食店のキャンセル料について、「いくらまでなら有効か」を決める一律の金額や割合は、法律にありません。個人のお客様との予約の場合、消費者契約法9条1項1号が、契約の解除に伴う損害賠償額の予定や違約金のうち、同種の消費者契約の解除に伴い事業者に生ずべき「平均的な損害」の額を超える部分を無効としています。つまり、キャンセル料は、お店が決めた金額が自動的に有効になるのではなく、お店に生じる損害の見込みの範囲に収まっているかどうかで、有効な部分が決まります。
もう一つ重要なのは、この判断が「解除の事由、時期等の区分に応じ」て行われることです。1週間前のキャンセルと前日のキャンセルと当日のキャンセルでは、お店に生じる損害が違います。そのため、段階を設けたキャンセル料は、段階ごとに、平均的な損害の範囲に収まっているかを考えます。前日は損害が大きいからという理由で前日の割合を高くするのは自然ですが、その高さを説明できるだけの根拠(仕入れ済みの食材、仕込み、空いた席の見込み)が必要です。
このページでは、コースや席の予約のキャンセル料を中心に、枠組み、損害の見立て方、期日の区切り方、人数減の扱い、事前の表示と説明、受取のない予約制の食品販売の扱いを、順に整理します。ネット予約の画面での表示はネット予約と事前決済、会社などの団体の宴会は宴会・貸切のページで扱います。
キャンセル料が争われる枠組み:消費者契約法9条と民法420条
キャンセル料の条項には、複数の条文が重なって関係します。順番に整理します。
キャンセル料に関係する条文
| 条文 | 内容 | キャンセル料での意味 |
|---|---|---|
| 民法420条 | 当事者は、債務の不履行について損害賠償の額を予定することができる(1項)。違約金は、賠償額の予定と推定される(3項) | お客様が予約を守らなかったときの賠償額をあらかじめ決めておくこと自体は、民法上は認められる |
| 民法415条 | 債務者が債務の本旨に従った履行をしないときは、債権者は損害の賠償を請求できる | 予約を破られた店は、損害の賠償を請求できる。キャンセル料の条項は、この賠償の額を事前に定めるもの |
| 民法541条・542条 | 債務不履行を理由とする契約の解除の定め | お客様が来なかったこと自体を理由に、店が予約を解除する場面の根拠 |
| 消費者契約法9条1項1号 | 解除に伴う損害賠償額の予定・違約金のうち、同種の契約の解除に伴い事業者に生ずべき平均的な損害の額を超える部分は無効 | お客様から取消しの連絡があった場合(解除)、個人のお客様については、民法420条で予定した額も、この上限の範囲でしか有効にならない |
| 民法413条・536条2項・567条2項 | 債権者が履行を受けることを拒み、または受けることができない場合の定め(受領遅滞、413条)。債権者の責めに帰すべき事由で債務を履行できなくなったときは反対給付を拒めず、債務者は免れた利益を償還する(536条2項)。売買で履行の提供をしたのに買主が受け取らない場合の危険の移転(567条2項) | 取消しの連絡がないまま来店しない、受取に来ないという場面は、解除に伴う違約金ではなく、これらの条文で考える |
| 消費者契約法9条2項 | 損害賠償・違約金を請求する場合、消費者から説明を求められたときは、算定の根拠の概要を説明するよう努めなければならない | 「なぜこの金額なのか」と聞かれたときに、概要を説明できる準備が要る |
| 消費者契約法10条 | 消費者の権利を制限し義務を加重する条項で、信義誠実の原則に反して消費者の利益を一方的に害するものは無効 | 9条に当たらないキャンセルの条項(返金の制限など)も、この条文で点検する |
民法420条は賠償額の予定を認めていますが、個人のお客様との契約では、消費者契約法9条1項1号が上限を画します。ですから、キャンセル料の設計は、「民法で予定できる」ではなく、「消費者契約法の上限の範囲でいくらにするか」と考えます。また、消費者契約法の「消費者」とは、個人(事業として又は事業のために契約の当事者となる場合を除く)をいいます(同法2条1項)。会社の宴会の幹事や、事業のための接待の予約は、この「消費者」にあたらないため、9条の対象外です。個人の家族の食事会や友人どうしの会食は、消費者契約です。
ここで、取消しの場面を二つに分けて整理しておきます。お客様から取消しの連絡があった場合は、契約の解除にあたり、キャンセル料の額は9条1項1号の平均的な損害の範囲に収まる必要があります。連絡のないまま来店しない、受取に来ないという場合は、取消しの連絡による解除ではなく、店が席と料理を用意して待ったのに受け取られなかった場面です。ここでは9条1項1号だけで説明するのではなく、民法の受領遅滞(413条)、食品の売買なら危険の移転(567条2項)、席や料理の提供のような役務なら危険負担(536条2項)で考えます。536条2項は、債権者(お客様)の責めに帰すべき事由で債務を履行できなくなったときは、債権者は反対給付を拒めないが、債務者(店)が自己の債務を免れて得た利益は債権者に償還しなければならない、と定めています。つまり、請求の基礎は、用意に費やした費用や失った利益から、使わずに済んだ費用を差し引いた額です。キャンセル料の割合を規約に定額で置く場合も、過大な額は消費者契約法10条や民法90条で争われます。
「平均的な損害」を飲食店でどう見積もるか
「平均的な損害」という言葉は、一件ごとの実際の損害ではなく、同種の契約の解除に伴って、事業者に通常生ずる損害の平均的な額を指します。個別の予約で実際に生じた損害が大きかったとしても、その額が、同種の予約の平均を超えていれば、超える部分は9条1項1号の対象になります。
飲食店で、予約のキャンセルによって生じる損害は、大きく四つに分けて考えると整理しやすくなります。
キャンセルで生じる損害の構成と見立て方
| 損害の種類 | 内容 | 見立てるときの視点 |
|---|---|---|
| 仕入れ済み食材の損失 | 予約に合わせて発注・仕入れた食材のうち、他の予約に使えず廃棄になる分 | 日持ちする食材か、他のメニューに転用できるか。コース専用の食材か。キャンセルの時期が遅いほど、転用できない割合が高くなる |
| 仕込み・準備の損失 | 下ごしらえ、仕込み、器や会場の準備に費やした作業 | 仕込みを始める時期(前日か当日か)より前のキャンセルであれば、この分は小さい |
| 個別に手配した品の費用 | その予約のために特別に注文した酒、花、記念日のケーキ、装飾など | 仕入先に取り消せなかった費用が、実費として生じているか |
| 空いた席による逸失利益 | 予約の席を押さえたために、他のお客様を断ったことで失った利益 | 売上そのものではなく、売上から、その予約がなければ支出せずに済んだ費用を引いた利益として見る。代わりのお客様を入れられる見込みも考慮する |
この表のうち、仕入れ済み食材と仕込みは、キャンセルの時期が遅くなるほど増えていきます。反対に、キャンセルの時期が早ければ、食材の発注を止められ、席にも別のお客様を迎えられるため、損害は小さくなります。時期の区分ごとにキャンセル料を変える合理性は、ここにあります。
逸失利益は、見立て方に注意が必要です。コース料金の全額が損害になるわけではなく、料金から、予約がなくなったことで支出せずに済んだ原価や変動費を差し引いた額が基本になります。さらに、直前のキャンセルであれば、代わりのお客様を入れにくく、損害は大きくなる一方、予約が取りにくい繁忙日と、空席が多い日とでは、見込みが違います。「平均的な」損害であることを意識して、繁忙日も閑散日も含めた、同種の予約の平均で考えます。
確認の問いと理由キャンセル料の根拠を整理するための確認
コース専用の食材は、いつの時点で発注・仕入れをするか
発注の時点より前のキャンセルであれば、この損害は小さく見積もれます。
仕込みを始めるのは、前日か当日か
仕込みの開始より前の区分には、この分を含めません。
特別に手配する品(記念日のケーキ、花など)は、取り消せるか
取り消せない品の実費は、別の項目として、実費の範囲で請求する書き方もあります。
同じ日・同じ時間帯に、他のお客様を迎えられる見込みはどの程度か
逸失利益の大きさに影響します。繁忙日と閑散日の平均で考えます。
コース料金の原価率は、どの程度か
料金の全額ではなく、料金から回避できた費用を引いた額で見ます。
期日の区切り方:前々日・前日・当日・無断の段階
キャンセル料の段階は、お店の仕入れのリズムに合わせて決めるのが基本です。典型的には、次のような区分が使われます。
キャンセル料の区分の例と、設計の視点
| 区分の例 | 主な損害 | 設計の視点 |
|---|---|---|
| 予約日の○日前まで | ほとんど生じない | 無料とするのが一般的。食材の発注前なら、損害は小さい |
| 予約日の○日前から前日の前まで | 食材の発注・仕込みの一部 | 発注済みの食材のうち、転用できない分の見込みに応じた割合にする |
| 予約日の前日 | 食材の仕入れ・仕込みがほぼ済んでいる | 損害が大きくなる区分。割合を上げるなら、仕込みの内容を説明できるようにしておく |
| 予約日の当日(開店前) | 仕入れ・仕込みが済み、席も埋まらない | 代わりの予約が入る可能性が低い区分 |
| 連絡のない不来店(無断) | 当日の席と料理が丸ごと無駄になる | 取消しの連絡による解除ではなく、席と料理を用意して待った場面。民法の受領遅滞・危険負担の整理で、実際に生じた損害から使わずに済んだ費用を引いた額を基礎にし、当日の区分の目安を超えない額で考える |
表の数字を入れるときは、「○割」と決めるだけでなく、その割合を選んだ理由を、お店の中で言葉にしておくことが大切です。消費者から算定の根拠の説明を求められた場合、事業者は、その概要を説明するよう努めなければなりません(消費者契約法9条2項)。説明の義務そのものは努力義務ですが、根拠を説明できないキャンセル料は、争いになったときに分が悪くなります。
条文例キャンセル料の条文例(コースの予約)
- お客様は、ご予約の日時の前に、当店所定の方法(電話、予約サイトの操作、メールなど)により、ご予約を取り消すことができます。
- ご予約の取消しがあった場合、取消しの時期に応じて、次の表のキャンセル料をいただきます。ご予約日の○日前まで:無料/○日前から前日の前まで:コース料金の○割/前日:コース料金の○割/当日:コース料金の○割。
- 前項の割合は、お料理の食材の仕入れ・仕込み等に当店が支出する費用を考慮して定めたものです。お客様から求められたときは、算定の根拠の概要をご説明します。
- ご連絡なくご来店されなかった場合は、当日のお取消しの場合の定めを目安として、当店がご予約のために支出し、他に振り替えることができなかった費用の範囲でご請求します。
- 当店の責めに帰すべき事由によりご予約をお受けできなくなった場合、キャンセル料は発生しません。すでにお預かりしたお金は、全額お返しします。
割合と日数は、お店の仕入れと席数に応じて定めます。第3項のように根拠の概要を示す旨を入れておくと、説明を求められたときの対応にもつながります。
書き方の例(一般的な例) キャンセル料の書き方
区分と割合
理由全額を一律に課す条項は、平均的な損害を超える部分が無効になるおそれがあります。区分ごとに根拠を持たせます。
店側の都合
理由店の側の事情で提供できない場合にまでお客様に負担を課すのは、消費者契約法10条の観点から問題になります。
災害・天候
理由全てを一律に扱うより、扱いの基準を示す方が、お客様の理解を得やすくなります。免除の判断が恣意的にならないよう、基準を決めておきます。
人数減の扱いと、確定人数の期限
コースの予約では、キャンセルのほかに「人数が減った」という場面が頻繁に起きます。たとえば、10人で予約していたが当日になって8人になった、というときです。この人数減は、契約の一部を解除したのと同じ関係にあります。消費者契約法9条1項1号は、「契約の解除に伴う」損害賠償額の予定を対象としますが、人数減の場合も、解除された部分(減った人数分)について、キャンセル料を定める条項は、同じように平均的な損害の範囲で考えるのが自然です。
人数の扱いで実務上大切なのは、「いつまで人数の変更を無料で受け付けるか」を決めておくことです。これを「確定人数の期限」と呼ぶと整理しやすくなります。食材の発注は、この期限を基準に行うため、期限以降の減少は、仕入れ済みの食材の損失に直結します。
人数の増減が起きる時期と、押さえる点
- 確定人数の期限より前
人数の増減は自由に受け付けられる。食材の発注前なので、店の損害は小さい。
押さえる点無料で変更できることを、予約画面と確認メールに明記する。
- 確定人数の期限から前日まで
減った人数分の食材は、すでに発注済みか仕込み済みになっていることがある。
押さえる点減少分に、キャンセル料と同じ区分の割合を適用するか、一定数までは無料とするかを決める。
- 当日
減った人数分の料理は、ほぼ廃棄となる。席も他に回せない。
押さえる点当日の減少分は、当日キャンセルと同様に扱うことを明記する。
- 人数の増加
増えた人数分の席と食材の用意ができるとは限らない。
押さえる点増加は、店が受けられる範囲で受けると書き、受けられない場合の扱いも決める。
確定人数の期限を決めるときは、予約画面に目立つ形で書き、確認メールにも入れます。その期限は、お店が食材を発注する時期と、仕込みを始める時期から逆算して、合理的に説明できる日にします。期限が早すぎる(たとえば1か月前など)と、お客様にとって一方的な条件になり、消費者契約法10条の観点から見直しを求められるおそれがあります。
事前の表示と、説明を求められたときの対応
キャンセル料の条項があっても、お客様がそれを知らずに予約をしたのであれば、「聞いていない」という争いになります。条項を契約の内容にするためには、予約を申し込む前に、お客様がそれを読める状態にしておくことが前提です。
キャンセル料を契約の内容にする流れ
民法は、定型約款について、事前に「契約の内容とする旨」を相手方に表示していたときは、個別の条項にも合意したものとみなす、と定めています(民法548条の2第1項)。ただし、相手方の権利を制限し、義務を加重する条項で、相手方の利益を一方的に害するものは、合意しなかったものとみなされます(同条2項)。キャンセル料の条項は、お客様に義務を課す条項ですから、事前の表示と内容の相当性の両方が求められます。
電話の予約では、キャンセル料の説明を電話口で行うことになります。その場合は、「前日からキャンセル料がかかります」と一言伝えるだけで、あとで「聞いていない」という争いを大きく減らせます。電話の予約を受けた後に、ショートメッセージやメールで条件を送ることも有効です。
書き方の例(一般的な例) 事前の表示の仕方
表示の位置
理由規約に書いてあるだけでは、申込みの前に読んだとは言えない場面があります。画面の目に入る位置に要点を出します。
確認メール
理由確認メールに条件を再掲すると、予約時の画面を見ていないお客様にも、条件を示した記録が残ります。
受取のない予約制の食品販売の扱い
飲食店でも、予約制のケーキやお弁当、おせち、テリーヌなどを、受取の日時を決めて販売する場面があります。このような予約制の食品販売で、お客様が受取に来なかった場合の扱いは、飲食店の席の予約とは違う論点を含みます。
典型的な書き方は、「受取がなかった場合は、返金しない。店は商品を廃棄できる」というものです。これは、見方を変えれば、受取がなかったときのキャンセル料を、代金の全額とするという内容です。この条項には二つの場面があります。受取日の前に「取り消したい」という連絡があった場合は、契約の解除にあたり、返金しない額が9条1項1号の平均的な損害の範囲に収まるかを考えます。受取日に連絡なく来ない、受取に来ないという場合は、取消しの連絡による解除ではなく、店が契約に適合する商品を用意して引渡しの履行を提供したのに受け取られなかった場面です。この場合は、その後に双方に責任のない事由で商品が傷んでも買主の負担になること(民法567条2項)や、受領遅滞中は保存の注意義務が軽くなり、増えた費用が買主の負担になること(同法413条)など、民法の整理が先に立ちます。いずれの場面でも、その商品が、特定のお客様のために作った受注生産のものであり、他に売ることができず、材料も他に使えないのであれば、損害は大きくなります。一方、材料を転用できる、あるいは他のお客様に売れるのであれば、代金の全額が損害とは言えません。定額を規約に置くときは、過大な額は消費者契約法10条や民法90条の問題になります。
受取のない予約制の商品の損害の見方
受注生産の商品
他に売れない場合
- 製造に着手した後は、原材料費・仕込みの損失が大きい
- 全額に近い割合も説明しやすいが、製造に着手する前の時期の区分は低くする
在庫から用意する商品
他のお客様に売れる場合
- 損害は、売れ残りによる値引きや廃棄の分が中心
- 全額を請求する根拠は弱くなる
日持ちする商品
後日の再販売ができる場合
- 廃棄を前提とせず、保管や再販売の費用で見る
- 受取日の変更を認めて、損害を避ける運用も考えられる
どの型に当たるかによって、キャンセルの期限と割合の設計が変わります。
もう一つ、この場面で気をつけたいのは、返品や返金の可否の根拠として引用する条文の正確さです。たとえば、特定商取引法15条の3は、通信販売の商品又は特定権利の売買契約について、商品の引渡し等を受けた日から8日を経過するまで申込みの撤回等ができるという規定で、広告に申込みの撤回等についての特約を表示していた場合には適用しないとされています。この規定は、商品と特定権利が対象で、役務の提供は対象に含まれません。また、消費者契約法8条は、事業者の損害賠償責任を免除する条項を無効とする規定ですから、「返品しない」ことの根拠にはなりません。予約制の食品販売を、ネットで申込みを受けて行う場合は、通信販売にあたり得ます。その場合の返品の扱いは、広告と申込み画面に、返品の可否と条件を表示することで整理します(15条の3第1項ただし書)。規約に条文を引用するときは、条番号と対象を、条文で確かめてから書きます。
書き方の例(一般的な例) 受取のない場合の書き方
受取がないとき
理由代金の全額を返金しない条項は、受取日の前に取消しの連絡があった場合は9条1項1号の検討が必要で、連絡なく受取に来ない場合も、過大な額は消費者契約法10条や民法90条の問題になります。変更に応じる余地と、割合の根拠を示します。
返品不可
理由条文を引用して返品不可の根拠とするより、不具合のあるときは対応することを含めて、内容を具体的に書く方が整います。
支払遅れと無断キャンセルの金銭請求
キャンセル料の請求では、支払の遅れに関する条項も、あわせて確認します。消費者契約法9条1項2号は、消費者が代金を支払期日までに支払わない場合の損害賠償の額の予定や違約金を定める条項について、支払期日の翌日から支払をする日までの期間につき、年14.6%の割合を乗じた額を超える部分を無効としています。事前決済のない席の予約では、キャンセル料の請求は後日の請求書や口座への振込みになることがあります。その場合の遅延損害金は、この上限の範囲で定めます。
無断キャンセルの金銭請求で確認すること
| 確認すること | 理由 |
|---|---|
| 予約の時点で、キャンセル料の条件を示していたか | 条件が示されていなければ、契約の内容として請求しにくい |
| 請求できる額が、当日の区分の範囲か、実際に生じた損害の範囲か | 無断を理由に、実際の損害を超える高い額を課すと争いになる。取消しの連絡があった場合は9条1項1号、連絡がない場合は民法の受領遅滞・危険負担の整理で見る |
| 請求書に、算定の根拠の概要を添えられるか | 説明を求められたとき(9条2項)の準備になる |
| 予約者の連絡先と、請求の方法が確保されているか | 事前決済やカード情報の保管がないと、請求の回収が難しい |
| 遅延損害金は、年14.6%を超えていないか | 9条1項2号。超える部分は無効 |
事前決済やデポジットの制度は、請求の回収をしやすくしますが、別の論点を生みます。預かった金額の名称と性質(予約金、内金など)、返金・充当の扱い、決済の表示は、ネット予約と事前決済で整理します。
起きがちなこと
キャンセル料で起きがちなこと
- 前日・当日の割合だけが高く、根拠を聞かれて説明できない。
- 規約にだけ書いてあり、予約の画面や確認メールには出ていなかった。「そんな条件は知らなかった」と言われる。
- 人数減の扱いが決まっておらず、当日に減った分の料金を巡ってもめる。
- お店の都合で提供できなくなったのに、キャンセル料の条項が一律に書かれていた。
- 受取のない商品は返金しないと書いていたが、受注生産でない商品にも一律に適用していた。
- 返品不可の根拠として引用した条文が、対象や条番号が合っていなかった。
キャンセル料は、お客様との関係を守りつつ、お店の損害を最小限にするための制度です。高すぎる金額は、無効になるだけでなく、お店の評判にも響きます。根拠を持った金額を、事前に示すことが、双方にとっての安心につながります。トラブルになったときの確認の順序はトラブルとよくある質問のページにまとめています。
よくあるご質問
飲食店のキャンセル料は、コース料金の何割まで請求できますか?
法律に、割合の上限は書かれていません。個人のお客様との予約では、消費者契約法9条1項1号により、同種の契約の解除に伴い事業者に生ずべき平均的な損害の額を超える部分が無効になります。この判断は、解除の事由、時期等の区分に応じて行われます。仕入れ済みの食材、仕込み、空いた席の見込みを、区分ごとに見積もり、その範囲に収まる割合を定めます。
無断キャンセルの場合は、全額を請求してもよいですか?
無断であることだけを理由に全額を請求できるわけではありません。事前に取消しの連絡があった場合は契約の解除にあたり、請求できるのは、同種の契約の解除に伴い事業者に生ずべき平均的な損害の額の範囲です(消費者契約法9条1項1号)。連絡のないまま来店しない場合は、取消しの連絡による解除ではなく、席と料理を用意して待った場面なので、民法の受領遅滞(413条)や危険負担(536条2項)の整理で、実際に生じた損害から使わずに済んだ費用を差し引いた額を基礎に考えます。いずれも、受注生産のコースで食材が転用できず、席も他に回せないという事情があれば、当日の割合が高くなる根拠になります。
お客様から「キャンセル料の根拠を教えてほしい」と言われたら、答えなければなりませんか?
事業者は、消費者から説明を求められたときは、損害賠償の額の予定又は違約金の算定の根拠の概要を説明するよう努めなければなりません(消費者契約法9条2項)。努力義務ですが、説明できないキャンセル料は、争いになったときに不利になります。食材の仕入れの時期や仕込みの内容、席の見込みなど、割合を選んだ理由を、あらかじめ言葉にしておきます。
受取に来なかった予約制の食品は、返金しなくてもよいですか?
受取日の前に取消しの連絡があった場合は契約の解除にあたり、代金の全額を返金しないことは、キャンセル料を代金の全額にする内容として、消費者契約法9条1項1号の平均的な損害の範囲で考えます。連絡なく受取に来なかった場合は、店が履行の提供をしたのに受け取られなかった場面なので、民法の受領遅滞(413条)や危険の移転(567条2項)の整理が先に立ちます。どちらの場面でも、受注生産で他に売れないなど、損害が代金に近いと説明できる場合は成り立ちやすい一方、他に売れる商品であれば、全額の根拠は弱くなります。受取日の変更に応じる運用を併せて示す書き方も有効です。
法人(会社)の宴会の予約でも、消費者契約法9条は適用されますか?
消費者契約法の「消費者」は、事業として又は事業のために契約の当事者となる場合を除く個人です(同法2条1項)。会社が主催する宴会は、通常、この「消費者」にあたらず、9条の対象外になります。その場合は、民法420条の賠償額の予定や、個別の契約条件の相当性の問題として整理します。詳しくは宴会・貸切のページで扱います。
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本ページは一般的な情報提供です。個別の取引への当てはめは、営業の形態や契約の内容によって異なることがあります。書き方の例として紹介している内容は、契約書作成の実務でよく見られる書き方を整理した例で、特定の事業者や案件を示すものではありません。条文は e-Gov法令検索(法令API)で確認しています。参考: e-Gov法令検索 / 消費者庁 / 厚生労働省 / 個人情報保護委員会